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SUS302(ステンレス鋼)の特徴や加工について解説


SUS302とは
SUS302は数あるステンレス鋼の中でも、特に強度に優れているステンレス鋼です。
同じステンレス鋼であるSUS304とほぼ同じクロム(Cr)18%やニッケル(Ni)8%を主成分としていますが、一点大きく違う点があります。
それは炭素の含有量で、SUS304と比べ約二倍の炭素(C)0.15%MAXを含有しております。
この多く含まれている炭素によって加工硬化が起こりやすく使用する際には更に高い強度を持ったステンレス鋼となります。
しかし、この多く含まれる炭素によってSUS302は高温下で粒界腐食と呼ばれる腐食がSUS304より起こりやすくなっているため、溶接加工を行うには向いておらず、高温になるような場所での使用にはあまり向いていないステンレス鋼となっております。
SUS302で起こる粒界腐食とは?
SUS302は他のステンレス鋼と比べ優れた強度を持っていますが、高温下で使用する際は粒界腐食という現象に気をつけなければなりません。
粒界腐食とはSUS302を始めとするオーステナイト系ステンレス鋼の金属組織の境目で特に起こるとされている腐食のことを指します。
オーステナイト系ステンレス鋼は約600℃~800℃まで熱せられる事により、金属組織の境目にクロム炭化物が析出し、周囲のクロム濃度が低下します。
クロムは腐食を抑える役割があるため、クロム濃度が低下した部分から腐食や強度の低下が起きるのです。
SUS302は その多く含まれる炭素が熱せられる事により、粒界腐食を起こしやすく溶接性に劣ります。
SUS302の成分
SUS302は18Cr-8Ni-0.1Cの構造となっており、炭素の含有が多いため、SUS304よりも加工硬化が強く出る性質を持っていることが特徴です。
そのため、冷間加工を行うことで更に強度が上がります。
SUS301より伸びは劣りますが、SUS304とよく似た性質を持っているため同じような用途で使用される場合が多いです。
SUS302の耐食性
SUS302とSUS304はよく似ていますが耐食性についてはSUS302が若干劣ります。
硝酸などの酸化性の酸への耐食性は高いですが、塩酸や硫酸などの非酸化性の酸への耐食性は特に低いです。
更に潮風などの塩害への耐久性も低いため、海周辺での使用には向きません。
SUS302を加工したボルトやバネを使用する際には注意しましょう。
SUS302の磁性
SUS302を始めとするオーステナイト系のステンレス鋼は、非磁性鋼のため磁石につくことはありません。
しかし、冷間加工を行うことにより微弱な磁性を持つようになります。
同じオーステナイト系のステンレス鋼SUS301も冷間加工を行うことにより強い磁性を持ちますが、SUS302はSUS301ほど強い磁性は持ちません。
SUS302の耐酸化性
SUS302やSUS304を始めとするオーステナイト系のステンレス鋼は、クロムの保有量が多く優れた耐酸化性を持つ金属です。
ですが、そこにシリコンを加えたSUS302BはSUS302より優れた耐酸化性を持っています。
オーステナイト系のステンレス鋼は表面にある不動態皮膜によって優れた耐酸化性を持っています。
SUS302Bに含まれるシリコンは、この不動態皮膜の下に酸化ケイ素(Si02)の層を形成することにより、SUS302より優れた耐酸化性を発揮します。
SUS302の用途

SUS302はバネやボルト、食器や刃物、機械の部品など様々なものに使用されています。
加工硬化の影響により優れた強度を持つため、ボルトやバネといった製品への使用に向いたステンレス鋼です。
SUS302の加工について
前記したようにSUS302は溶接加工には向きませんが、延性や靭性に優れており様々な加工が行えます。
SUS302の曲げ加工
SUS302を始めとするステンレス鋼の曲げ加工は、決まった角度や形状に圧力をかけることで変形させる加工法のことです。
一般的にはベンダーと呼ばれる機械で圧力をかけてステンレス鋼を曲げていきます。
曲げ加工では、ステンレス鋼を溝の掘られた金型にセットし押し込むように圧力をかけて曲げる方法が一般的で、次のような種類の曲げ加工があります。
・L字加工
アルファベットのLのような形に曲げる加工
・角度曲げ
ステンレス鋼を90℃以外の角度の曲げる加工
・Z型曲げ
上から見た際にアルファベットのZのような形に曲げる加工
・チャネル曲げ
C型チャネルと同じ形に曲げる加工
SUS302の絞り加工
絞り加工とは圧力をかけることでステンレスを変形させる加工法です。
一枚のステンレス板から円筒、角筒、円錐など様々な形を作ることができ、成形された物につなぎ目がないことも特徴です。
SUS302の切削加工
SUS302を始めとするステンレス鋼は一般的に難削材と呼ばれ切削加工が難しいです。
ステンレス鋼が難削材と呼ばれる理由は以下のようなものがあります。
・熱伝導率が低い
・加工硬化しやすい
金属を加工する際には、金属と工具との抵抗により約800~1200℃の熱が発生します。
ですが、ステンレス鋼は熱伝導率が低いため、切削加工を行う際の抵抗による熱が切削工具に集中してしまい、工具の先端が摩耗しやすいのです。
加えてステンレス鋼は加工硬化しやすいという性質を持っているため、二度目の加工が難しくなります。
これらの理由からステンレス鋼の切削加工は、難しいとされています。
そのため、ステンレス鋼の切削加工には優れた耐熱性や耐摩耗性を持つ切削工具が適しています。
ポイント
・SUS302はSUS304とよく似た性質を持っており、強度は優れているが耐酸化性は劣っている。
・SUS302は酸化性の酸には強い耐食性を持っているが、非酸化性(塩化物)の酸には耐食性は弱いため、海付近での使用は避ける。
・SUS302は冷間加工を行うことで、微弱な磁性を持つ。
・SUS302に多く含まれる炭素の影響で、溶接加工に向かない。
・SUS302は曲げ加工、絞り加工に向いている。
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